ターム・プレミアムについて
概要
「金利の期間構造」と「ターム・プレミアム」の説明
まず金利の期間構造を,純粋期待理論という考え方に基づいて説明します*1。
仮定として市場は完全性であり,裁定機会がないものとします。 そのとき純粋期待仮説は,次の式で表すことができます。
左辺の は 年物の長期金利であり, 右辺は現在から 年後までの短期金利の予想値の平均を表しています。 すなわち,裁定取引の結果として,長期金利で運用しても,短期金利で運用しても収益率が同じであるということを, 純粋期待仮説は表しています。
次に,ターム・プレミアムを説明します。
ターム・プレミアムは(1)貸倒プレミアムと,(2)流動性プレミアムから構成されています。 (1)貸倒プレミアムは,発行主体に帰属する信用リスクや国家レベルの債務危機といったソブリン・リスクを反映したプレミアムです。 これらのリスクが大きいほど,貸倒プレミアムは大きくなります。 次に(2)流動性プレミアムは,満期が長い債券ほど短い債券と比較して簡単に現金化できないという性質に基づいたプレミアムです。 通常,長期金利は将来に対する不確実性が短期金利と比べて大きく,その対価として発生すると考えることができます。
金利の期間構造を考える場合,通常はターム・プレミアム()が次式のように(1)式の右辺に加わったものとして考えられます。
また同様に図で表すと,次のようになります。イールド・カーブにターム・プレミアム(: 年物の場合) が上乗せされています。
ターム・プレミアムの推移
式(2)から,ターム・プレミアム( 年物) を逆算することができます*2。
本来は期待値を用いて計算する必要がありますが,理論的に取得することが難しいので実際の金利を用いて計算してみます。 財務省HP「国債金利情報」からデータを取得し,例として10年物のターム・プレミアム を計算してみます。 図で表すと,以下のように(データは2010年1月から2018年2月まで)。
図から日本では非伝統的金融政策の深化にともなって,ターム・プレミアムは趨勢的に低下しているのが分かります。
参考文献
- 大村・楠美(2012),『ファイナンスの基礎』
- 作者: 大村敬一,楠美将彦
- 出版社/メーカー: 金融財政事情研究会
- 発売日: 2012/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
- 福田(2013), 『金融論 市場と経済政策の有効性』
- 作者: 福田慎一
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2013/04/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
- Cochrane and Piazzesi (2008), "Decomposing the Yield Curve", http://faculty.chicagobooth.edu/john.cochrane/research/papers/interest_rate_revised.pdf